Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

向こう三軒両隣のネットワークを NEW
2012年06月20日

向こう三軒両隣のネット・ワークを
              山口県立大学学長・理事長
                      江里 健輔

高齢化社会を迎え、死亡者数が増えています。ちなみに、2008年の死亡者実数は114万人で、死亡場所は医療機関92万7千人、自宅14万5千人、老人施設4万4千人、その他2万7千人です(読売新聞、2009,11,3)。今後、死亡者数は徐々に増え、2040年には160万人と現在より50万人増えるとの予想です。一方、国民医療費と介護費は、2010年度ではそれぞれ7.9兆円、37.5兆円ですが、いずれ2025年度には23兆円、52.3兆円になると予想されています(読売新聞、2010,12,16)。このような状況で、老後を何処で迎えれば、健やかな老後が送れるでしょうか。日本ではまだまだ多くの人達は病院で亡くなっていますが、施設や自宅環境が整っているアメリカやオランダでは病院で亡くなる人の割合は30%前後と少なく、ほとんどの人達が自宅や施設で亡くなっています。誰もが、自宅で、家族に見守られながら亡くなりたいと思うのですが、現実は厳しいようです。介護労働安定センターの調べでは、日本の家族介護力(65〜84歳の総人口を100とした場合の40〜59歳の女性の人口割合)はフイリピン、フランス、英国より低く、それも年々低下し、この傾向は少子高齢化が進むにつれて顕著になってきます。政府は医療費抑制などを理由に、在宅ケアを推進していますが、特別養護老人ホームへの入居待ちが42万人余りという数字が示す通り、満足した環境で自宅療養出来る人はごく限られています。一方、施設などで働く介護職員の平均月収は2005年約20万円であったのですが、介護報酬の改定が数回行われたにも関わらす、2010年は約22万円と、必ずしも高くなっていません。そのため1年以内の離職率も18%〜20%と他の職種(平均15%以下)に比べ高く、福祉・介護に従事されている方々の労働環境はあまりよくありません。在宅介護も容易でない、施設でも十分な介護が受けられないとなると、死に場のない高齢者難民が出るでしょう。
日本の家族はこれまで子育て、家事、看病、介護、供養などを担っていましたので、安心してこの世と別れることができました。それが単身化、長期雇用の崩壊、家族関係の崩壊、コンビニ、外食などが進み、一方では、個人情報の守秘などで、今や隣にどんな人が住んでいるか判らないような社会になってしまいました。頼るべきものは人ではなく、緊急連絡カードでは、高齢者にとっては身につまされるばかりです。
今、大切なことは地域コニュニテイーの再生です。
「頼りの人は“遠くの親戚より隣の他人”」と言われているように、隣近所同士がいつでも、何処でも助け合えるネット・ワークを元気な時に作っておくことが健やかな老後を送る秘策と思いますが、如何ですか?




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