Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

夏バテ克服に水分補給を NEW
2012年07月25日

防府日報(2012,7,25)

        夏バテ克服に水分補給を
山口県立大学学長(理事長)
江里 健輔

このエッセイが紙上に出る頃は夏も盛りを過ぎているかもしれませんが、まだまだ暑い日が続いていることでしょう。そこで恐ろしいのは夏バテです。特に、高齢者が突然、体調不良を訴えられる時に最初に考えなければならないのは「脱水症」です。人間の体の60%は水です。新生児は80%が水です。このように人間は一見固体のように見えますが、ほとんどが「液体」、「水」です。野菜も固体のように見えますが、トマトの90%,リンゴの85%,魚は75%が水です。このように、生物にとって、勿論、人間にとっても、水は大変重要なものです。大体、水不足が1%になっただけで、猛烈にのどの渇きを覚え、成人では2〜4%不足すると幻覚・妄想などの症状が顕れはじめます。
それでは人間は1日にどのくらい水分を排出しているのでしょうか?
人間には無意識に水分を失っている不感蒸泄(吐く息に含まれる水蒸気、皮膚表面から分泌される汗など)が約900mlあります。この他に、尿として2000ml,糞尿として200ml毎日排泄されるために、これに等しい分だけの水分を補給しなければなりません。尿毒症という病気がありますが、これは1日の尿量が500ml以下の状態が続くと、毒が体に貯まり、発生するもので、生命を侵すことになります。
1日に補給すべき水分の必要量は2000mlという計算になりますが、食物や代謝物(体内で排出される水分)で水分が補給されますので、大体1200ml程度です。ペットボトル2本分が目安です。しかし、夏には汗のような不感蒸泄が増えますので、通常より多くの水分を補給しなければなりません。
のどが渇いて水を飲むのは当然ですが、高齢者では環境に対する反応が鈍くなるため、のどの渇きを訴えないことがあります。だから、意識的に飲むようにしないと予防出来ないのです。即ち、のどが渇いたから飲むのではなく、「強制飲水」が必要なのです。時間を決めて飲むようにすべきです。このように言うと、欲しくもない水がどうして飲めますかと反発されそうですが、一度に100mlとか、200mlを飲むことは負担になりますが、朝、目覚めた時とは、入浴前後など機にふれてコップ1杯飲むことで、1日総量で簡単に1000ml以上になるのです。
脱水症に陥ると、血液がどろっと粘りのある状態になります。こうした時には脳梗塞(脳の血管が詰まる状態)、心筋梗塞(心臓を栄養している血管が詰まる状態)が起こり、生命の危機をもたらすことがあります。
いくら血液をさらさらにする薬を飲んでも、水分を十分補給していなければ意味がありません。ですから、水を飲むことは健康を保つ上で極めて重要なことと言えます。



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