Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

意志が弱いと思う方へ NEW
2013年02月15日


               防府日報(2013,2,15)
              意志が弱いと思う方へ
                  山口県立大学学長(理事長)
                           江里 健輔


タバコを止めたいけれど、なかなか止められない、ダイエットしたいがなかなかできない、自分は意志が弱い人間だなと自己嫌悪の陥られることはありませんか?
そのような方へとっておきの話をいたしましょう「ケリーマクゴニガル:スタンフォードの自分を変える教室、大和書房、2013」。
私ごとで恐縮ですが、若いころ、禁煙に随分苦労したものです。きっかけは、手術で喫煙している人の真っ黒い「肺」を見た時でした。それ以来、吸いたいと思った時、必ず、真っ黒い「肺」を思いだすようにしたのです。この思いを重ねるうちに、タバコを手に持った途端、その「肺」が浮かびあがり、禁煙することができました。一般の方々には真っ黒い「肺」を見られるチャンスはありませんが、「ガン」=「死」の恐怖は感じておられるでしょう。
私たちの意志力は額と目の後ろに位置する脳の領域、つまり前頭前皮質にあります。人間が進化するにつれて前頭前皮質は他の生物に比べ大きくなりました(確かに、ペットの犬や猫がいくら可愛くても、老後を考えてエサを蓄えておくなんてことはしないでしょう)。これに伴い、自己コントロール機能が高まってきました。この前頭前皮質は、「やる力」、「やらない力」、「望む力」の3つの領域に分かれています。例えば、タバコを吸いたいと思った時、吸いたいという「やる力」と、吸ってはいけないという「やらない力」のせめぎ合いが始まります。すなわち、タバコを1本ぐらい吸っても直ぐには命に関係ないという自分、ガンになって死が早まるという自分の闘いです。これを決めるのがどちらを強く望むかの「望む力」です。
それではこの力を強めるにはどうしたら良いでしょうか?
それは、前頭前皮質を強めることです。脳は熱心な学生のように、経験したことを学んで身につけるそうです。例えば、毎日、数学をすれば数学に強く、心配ごとばかりしていれば、心配しやすい脳に、繰り返し集中を行えば、集中しやすい脳になります。それは丁度、運動している選手の筋肉がたくましくなるように、脳もたくましくなってきます。
意志が弱いと思っている人は望むことを繰り返し、繰り返し脳に刻むことです。そのうち、タバコを1本手にした途端、「ガン」=「死」が頭に浮かび、タバコに手が届かなくなるでしょう。
毎朝、きちんと起床し、職場に出かける貴方はすでに前頭前皮質が発達し、強い意志を持っています。「意志が弱い」と思えば、思うほど、弱い脳になってしまいます。
何事をする度に、「望む力」を思い出す脳を養ってください。決して、自分は意志が弱いと思ってはいけません。
防府日報(2013,2,15)
意志が弱いと思う方へ
山口県立大学学長(理事長)
江里 健輔

タバコを止めたいけれど、なかなか止められない、ダイエットしたいがなかなかできない、自分は意志が弱い人間だなと自己嫌悪の陥られることはありませんか?
そのような方へとっておきの話をいたしましょう「ケリーマクゴニガル:スタンフォードの自分を変える教室、大和書房、2013」。
私ごとで恐縮ですが、若いころ、禁煙に随分苦労したものです。きっかけは、手術で喫煙している人の真っ黒い「肺」を見た時でした。それ以来、吸いたいと思った時、必ず、真っ黒い「肺」を思いだすようにしたのです。この思いを重ねるうちに、タバコを手に持った途端、その「肺」が浮かびあがり、禁煙することができました。一般の方々には真っ黒い「肺」を見られるチャンスはありませんが、「ガン」=「死」の恐怖は感じておられるでしょう。
私たちの意志力は額と目の後ろに位置する脳の領域、つまり前頭前皮質にあります。人間が進化するにつれて前頭前皮質は他の生物に比べ大きくなりました(確かに、ペットの犬や猫がいくら可愛くても、老後を考えてエサを蓄えておくなんてことはしないでしょう)。これに伴い、自己コントロール機能が高まってきました。この前頭前皮質は、「やる力」、「やらない力」、「望む力」の3つの領域に分かれています。例えば、タバコを吸いたいと思った時、吸いたいという「やる力」と、吸ってはいけないという「やらない力」のせめぎ合いが始まります。すなわち、タバコを1本ぐらい吸っても直ぐには命に関係ないという自分、ガンになって死が早まるという自分の闘いです。これを決めるのがどちらを強く望むかの「望む力」です。
それではこの力を強めるにはどうしたら良いでしょうか?
それは、前頭前皮質を強めることです。脳は熱心な学生のように、経験したことを学んで身につけるそうです。例えば、毎日、数学をすれば数学に強く、心配ごとばかりしていれば、心配しやすい脳に、繰り返し集中を行えば、集中しやすい脳になります。それは丁度、運動している選手の筋肉がたくましくなるように、脳もたくましくなってきます。
意志が弱いと思っている人は望むことを繰り返し、繰り返し脳に刻むことです。そのうち、タバコを1本手にした途端、「ガン」=「死」が頭に浮かび、タバコに手が届かなくなるでしょう。
毎朝、きちんと起床し、職場に出かける貴方はすでに前頭前皮質が発達し、強い意志を持っています。「意志が弱い」と思えば、思うほど、弱い脳になってしまいます。
何事をする度に、「望む力」を思い出す脳を養ってください。決して、自分は意志が弱いと思ってはいけません。



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