Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

腎移植、提供五人重症 NEW
2013年06月13日

宇部日報(2013,6,13)     

腎移植、提供五人重症
        山口県立大学学長(理事長)
              江里 健輔

上記のタイトルは読売新聞に掲載された見だしです(2013,5,24)。沖縄の某病院で、生体腎移植で、腎臓を提供した健康な女性が亡くなったことが明らかになり、学会が2011年に、腹腔鏡手術で腎臓摘出を行った施設を調査したところ、これまでに、5人が腸や血管を傷つけられ、出血などを起こして重症になったことが明らかになりました。生体腎移植は健康な人の腎臓を摘出し、機能不全に陥った患者の腎臓と入れ替える手術です。従って、提供者が健康人であるだけに、余程の理由がないかぎり、その死は絶対にあってはならないことです。問題は健康な提供者が死あるいは重症になった理由が大出血であったことです。手術は最初から最後まで、出血との闘いです。出血は血管が傷つけられて起こるものですから、血管処置技術が上手であれば、あるほど、出血も少なく、術後経過も良好で、このような合併症は決して発生しません。私ごとで恐縮ですが、血管処置は心臓血管外科医の領域ですので、しばしば、他科の医師の手術で、血管を損傷し、その修復のため、手術室に来てくれ、と支援を求められたものです。
今回、このような不幸な状態を生じた病院に心臓血管外科医がいたかどうかわかりませんが、心臓血管外科医が待機し、サポートが早めに要請されていれば、このようなことは発生しなかったと思われます。
医学・医療は不完全なものです。合併症が100%発生しない手術だどはありません。今回のことがこのような体制にも拘わらず、発生したのであれば、家族には申しわけありませんが、致し方ないことです。しかし、血管を専門に扱う心臓血管外科医の待機がない、あるいは要請されないままで、死あるいは重症を招いたのであれば、許されるものではありません。学会はじめ当局は心臓血管外科医などの待機など病院システムが万全であったかどうかを検証し、是非とも公表して欲しいものです。
安心・安全な医療はどこで受けようが,保証されるべきです。しかし、「医師を選ぶのも寿命のうち」という言葉があるように、この言葉が生きている医療は患者さんにとっては不幸なことです。
読者の皆様、手術を受けられる場合、このような体制にある病院かどうかを自分できちんと確かめておくことが「健康は与えられるものではなく、獲得するもの」に繋がります。



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