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ガンと闘えー体の中にガン鬼がいる(その5) |
防府日報(2013,9,20)
ガンと闘えー体の中にガン鬼がいる(その5) 山口県立大学学長(理事長) 江里 健輔
平成22年6月23日、3回目の前立腺の組織検査を受けました。まず、坐位で仙骨麻酔を受け、両足を高くあげた砕石位となり、肛門より超音波エコーの端子を挿入し、前立腺を確かめ、細い組織針で前立腺の全ての領域10所から細胞が摘出されました。運よく、組織針がガン細胞に的中すれば、ガンと診断されますが、的中しないと、ガンがあってもガンと診断されません。医学は科学ですが、運もつきまといます。 担当医は組織検査しながら 「前立腺はあまり大きくありませんし、ガンのように固くありません。表面も滑らかで、でこぼこしていません。まあ、ガンの可能性は少ないでしょうね」 と私の気持ちを思いやって言ってくれました。しかし、PSA(ガンを示すマーカー)がこの10年間、次第に高くなり、下がったことは一度もなかったので、まあ、ガンだろうなと思っていましたので、担当医が私の不安を取り除いてやろうと慰めの言葉を発してくれているのだと、気持ちは有り難かったが、満願な嬉しさではありませんでした。術後合併症もなく、翌日退院しました。ただ、今度こそ、結果がはっきりする、10年悩んできたことが終わる、そう思うとなんだかどんよりした灰黒色の雲の隙間から一筋の光が射してくるような気持ちでもありました。まあ、ガンであっても、早期だろうし、前立腺ガンの治療は相当進歩し、予後(病気の変化)も他のガンに比べるとよいので、「まあ、いいか」と自分の都合のいいことばかり考えていました。 通常ならば、組織確定診断には1週間以上かかるのだが、感触でもいいから知りたい、この不安を出来るだけ早く払拭したいという気持ちが悶々とし、組織診断する病理医が後輩で知人であったので、恐る恐る電話しました。 「実は前立腺ガンの疑いで、組織検査を3日前に受けたんじゃ。担当医は『大丈夫ですよ』という有り難い言葉をかけてくれたんだが、どうもね」 とお願いした。彼は 「先生の切片はまだ私のところに回ってきていません。標本が出来ているか検査技師さんに聞いてみます。ちょっと待って下さい」 電話口で待つこと数分間、 「1時間後には標本が出来るそうです。でき次第、標本を顕微鏡で見ますので、もうしばらくお待ち下さい」 会議やら、訪問客の応対をしながら、「組織診断、組織診断」という言葉が頭の中を駆けめぐります。2時間たっても、連絡がありません。いらいらし、待ちきれず、ふるえる手で受話器を持ちあげ、再度、電話しました。 結果は次号へ
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