Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘えーガン鬼を体から追い出せ(8) NEW
2013年12月19日

防府日報(2013,12,19)

ガンと闘えーガン鬼を体から追い出せ(8)
      山口県立大学学長・理事長
              江里 健輔

待ちに待ったと言うべきか、手術予定日、7月16日が来ました。前日の午前中に入院。簡単な日常用品をバックに詰めて、家内の運転で、病院に向かいました。これで家の見納めになるのなかなあー、と。そうだ、手術は100%安全ではないのだ、何が起こってもおかしくない、そう、今まで手術を受けられる沢山の患者さんに話してきたではないか、自分だけ別だと思うな、そう思いながら、自宅を振り返ると、屋根に霞がかかったようで、狂ったように重なりあう蝉の声だけが耳もとにかぶさってきました。病院に辿りつくと、両手に荷物、家内と一緒という姿を見て、知人の医師が「学長、どうされたのですか?」と訊ね、その度に「ちょっと」と返事。「ああ、そうですか」ととりためのない会話をしながら、受付を済ませ、病室に案内されました。良く知った病室とはいえ、患者として入室するのは初めてで、なにもかもが全く別世界です。壁が汚れている、時計もない、カレンダーもない、いつでも転げて落ちそうなか細いベット、冷たそうな布団、窓から見える灰色の煉瓦壁、どれにも温かさが伝わらず、世界とは隔絶した空間で、生ぬるいお湯に浸かっているようで、満足させてれません。家内は「小綺麗し、明るいし、まあ、まあの部屋だね」と満足そうでした。入院するのはお前ではない、俺だぞと大声で叫びたい気持ちをそっと心の底にしまい込み、パジャマに着替えて横になりました。看護師さんがキャスターをごろごろと押しながら、「お邪魔します。入っていいですか?」といいながら、ぬっと姿を見せてくれました。
「私が担当の山本美代子(仮称)とです。一生懸命つとめますので、よろしくお願い申しあげます。何かありましたら、遠慮なく申しつけて下さいね」、柔らかめに金色に染めたポニーテールの髪型、色白の35才ぐらいのさっぱりした女性。信用してもいい人なのかなあー、と気になる。キャスターに載せられたパソコンを開き、
「何時ごろから、症状が出て来たのですか?痛みが有りますか?尿の出具合は?これまで病気をされてことは?」などなど、パソコンをにらみながら、鉄砲玉のように質問を浴びせ、まるで、女性検事の査問を受けているようです。一通りの質問が終わると、
「先生がその内、来られますので、そのままお待ちになって下さい。夕食の配膳は17:30分です。夕食が終わったら、それ以後、水以外は絶対口にしないで下さいね」と、子供言葉で丁寧(?)です。おれは大人だぞ、と叫んでも、ナイヤガラの滝の前で逆行しようとする孤船にすぎません。優愁を抱きつつ、ベットの上で悶々とするだけです。




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