Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

泥弱化した「初志貫徹」 NEW
2014年01月01日

宇部日報(平成26年1月1日)
    泥弱化した「初志貫徹」
     山口県立大学学長・理事長
             江里 健輔
新年、あけましておめでとうございます。

「初志貫徹」とは、決めた志を最後まで持ち続けることですが、なかなか容易なことではありません。考え、行動が秒単位に変わる人に出会うと、信じたらよいのか判らず、次第に人間不信に陥り、それがストレスとなり、精神的・身体的障害を来してきます。現在ではこのような人が多く、これが今までに経験したことのない事件が多発していると考えます。
「初志貫徹」には強い意志力が必要です。現代の私たちが持っている意志力は大昔の人間たちが仲間とうまく付き合い、和やかな社会を作り出すために、必要に迫られて身につけたものです。これは、脳の前頭前皮質の発達で身についたとされています。これまでは生まれ持った知能はあらかじめ決まっていて、変わらない、変わるのは加齢による劣化だけだと考えられてきましたが、最近の脳科学の発展で、脳は経験したことのないことを学んで身につけることが分かってきました。毎日、数学をやれば、数学に強い脳になり、繰り返し集中すれば集中しやすい脳になるとのことです。脳を鍛えることで、意志力を強化することが出来るのです。
物の言い方、人との付き合い方、酒の飲み方、遊び方などはすべて日常茶飯事の意志力にあります。このようなことは机に座って習得出来るものではありません。私達の子供のころには夕方になると、近所のおじさん、おばさんが「もう暗くなるから、家に帰ったら」と忠告してくれていました。地域が教室で、地元の人が教師でありました。今では若い人を教育しようと、叱咤したり、忠告すると、パラハラ、セクハラとなります。従って、見ても見ぬふりをするのが賢い生き方となりました。
人間としての有るべき姿が崩壊した社会を立て直すには、太い「志」を持った意志力の強い人間を育てる仕組みが今こそ必要な時代はないでしょう。



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