Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘えーガン鬼を体から追い出した(10) NEW
2014年02月14日

ガンと闘えーガン鬼を体から追い出した(10)
山口県立大学学長(理事長)
江里 健輔
手術日、7月16日の朝。目覚めは悪くない。10:00が執刀開始。8:30ごろ、看護師さんが睡眠誘導の術前注射をしながら、「良くねられましたか?頑張って下さいよ」と言い、少しずつぼんやりしてきた。病室を出たのは覚えているが、それからは全く記憶になく、朝かと思って目が覚めたら、手術が終わっていた。執刀医が
「先生、先生、手術は無事終わりましたよ。肉眼で見える限り、断端マイナス(摘出した前立腺の周囲にガンが存在していないという意味)で、ガンは完全に取り除かれました。安心して下さい。ただ、炎症がありましたので、周囲組織と癒着し、それを剥がすのに時間がかかりました。」
と声か掛けてくれた。これで、憎い、苦しめたガンという悪魔を体から追っ払うことが出来た、と。
前立腺は尿道を包み込むように存在するため、前立腺を摘出するには尿道も一緒に摘出し、その後、尿道を再建しなければならない。そのため、術後、尿道縫合部から尿の漏れ、また、前立腺周囲のリンパ節を徹底的に廓清するために、血管を損傷したり、リンパ路を遮断するために、これらの後遺症が生じる可能性もある。術後、発熱もなく、出血もなく、下肢の腫脹もなければ、その時、初めて「大丈夫」となるので、10日間は安心出来ない。外科医師であるだけに、無用な不安が、次から次へと湧いてくる。これからは自分との闘いだ、医師が治すにではない、自分が治すのだ、医師はそのお手伝いさんに過ぎない、ここで気弱になると、合併症が発生し易くなるので、心の電圧を上げようと。
最近、歌舞伎役者、中村勘三郎令夫人波野好江さんによる「中村勘三郎、最期の131日、哲明さんと生きて」という手記を読んだ。手記の通りであれば、中村勘三郎氏は医師によってあの世に送られたようなものである。食道ガンは早期と診断され、胸をなでおろしたのもつかの間、精査の結果、右肩付近のリンパ節一か所に転移が見つかり、進行ガンと断定。まさに、天国から地獄へ放り出されたようなものである。急遽、治療方針が変更。抗ガン剤で、ガンを縮小させ、その後、手術となった。医師の説明では抗ガン剤の治療で、食道ガンは内視鏡で見逃すほど縮小、転移リンパ節も13ミリから7ミリに縮小。原発の食道ガンは腹腔鏡で、肩のリンパ節転移は胸を開いて取る、ということであった。
遠隔転移があるガンに手術が成り立つのか?食道ガン手術と開胸を同時にするのは患者さんを過大に傷めつけること(過大侵襲)にならないのか、どう考えても、納得出来なかった。勿論、著者は医学に素人であるために、手記をそのまま信用することは出来が・・・
納得出来ない理由は次回へ



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