Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘え-ガン鬼を体から追い出した(11)
2014年03月20日

ガンと闘え-ガン鬼を体から追い出した(11)
    山口県立大学学長・理事長
              江里 健輔


食道ガンと右肩付近のリンパ節転移に対し、同時に手術(一期的手術)され、そのまま鬼籍に入られた歌舞伎役者中村勘三郎令夫人の手記を読み、この治療に疑問を持ちました(著者には医療知識がないので、そのまま信用出来ない内容もあると思うが・・・)。
手術には根治手術と姑息手術の二通りがあります。前者は肉眼的に見えるガンを手術により完全に摘出できる場合に行われ、後者は手術ではガンを完全に摘出することは出来ないが(例えば、ガンがすでに他臓器に転移した場合など)、一時的に症状を和らげ、QOLを改善しようとする場合に行われます。中村さんの場合、既に転移があるので、原則では手術は適応になりません。それにも関わらず、あえて手術に踏み切られたことは、手術により、右肩付近のリンパ節転移巣も完全に摘出されるという判断があったのでしょう。だとすれば、食道ガンの手術だけでも大手術であるのに、加えて、右の胸を開いて、転移巣を摘出する手術がどうして、同時に行われたのか疑問です。私なら二つに分けて手術したでしょう(二期手術という)。
このような過大侵襲を受けた患者が一旦誤嚥すれば、誤嚥物を自力で出すことが難しく、肺炎を来たすことは容易に予想されます。
私の場合、術前に全身骨シンチグラフイー検査で、転移がないことを確認した上で、前立腺ガンは周囲リンパ節を含めて一括して摘出されました。それでも、術後、手術創に発生する浸出液を排出するため、3ヶ所排出管(ドレーン)が挿入され、体を動かすこともままならず、体動の度に全身に激痛が走りました。中村氏には両側の胸、さらには鼻、腹などに管が挿入され、体を動かすことも出来なかったものと思われます。術後6日目誤嚥、それがきっかけとなり、肺炎をきたし、その治療として、人工呼吸器装着、気管切開と日に日に奈落の底に陥られました。術後11日目、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)と告げられ、がん研有明病院には呼吸器専門医がいない(ガン治療では日本のトップと自負する病院として、これもおかしな話しですが・・・)との理由で、東京女子医大病院へ、最後は膜型人工肺導入のため日本医科大学病院へそれぞれ転院されました。
医学・医療は100% 安全でありません。術後、どのような合併症が発生しても不思議ではありません。すべて結果次第です。
一旦術後合併症を発生した場合、それに対応出来ず、転院を求める医療体制に大きな疑問が投げかけられた思いです。
それにしても、私が治療受けた病院にはそれぞれの専門医が配置され、安心であったことは本当に幸せでありました。



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