Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

自分の体は自分で守ろう NEW
2014年04月13日

宇部日報(2014,4,10)

             自分の体は自分で守ろう

                山口県立大学理事長            
                   江里 健輔


ある先輩教授から聞いた話です。動脈硬化で下肢の血管が詰まる病気があります(閉塞性動脈硬化症と言います)。この病気を悪化させる一番の原因は喫煙です。アメリカでは禁煙しない限り、如何なる治療もしない、何故なら、いくら薬を飲んでも、また、手術をしても、喫煙していれば、元の木阿弥で、治療効果がない、という理由からです。日本では全く考えられないことです。
しかし、最近、産業競争力会議の分化会が、禁煙や運動など、生活習慣病予防の健康づくりに努力している人には保険料や医療費の負担額を安くする制度を設けるよう厚生労働省に提言しました(讀賣新聞、2014,3,30)。具体的には@特定健診(メタボ検診)を受けている、Aタバコを吸わない、B健康保険組合が指定する運動プログラムに参加している、C本人や家族の医療費が低い、D生活習慣病にかかっていない、などが条件とされています。要するに、健康増進に努力した者が報われるような制度を確立しようとする前向きの提言で、禁煙しない者には治療しないという考え方より日本人には適していると言えます。
70才以上になると、多くの方々が程度の差はあれ、動脈硬化にかかります。これは血管が硬く、内腔が狭くなり、その為に血流が減少し、いろいろな臓器に障害を生じる病気です。脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などが代表的な病気で、厄介なことに、その進行を遅らせることは可能ですが、元に戻すことは出来ません。しかも、それは、40才ごろからはじまりますので、若い時から予防しなければなりません。介護などのケアを必要とされている高齢者の多くは動脈硬化が原因です。日本人の平均寿命は男性が79才、女性が86才で、健康寿命(日常的な介護に頼ることなく、心身とも健康で暮らすことが出来る期間)はそれぞれ70才、73才とされています(厚労省、22年度資料)。重要なことは平均寿命から健康寿命を差し引いた期間(私は『苦悩病期間』と呼んでいます)を如何に短縮するかです。この世に生を受けた途端、その先に確実にあるものは死です。従って、生を受けている期間は『苦悩病期間』を短くし、人間らしく、活力ある生活をしたいものです。誰もが願う「大往生」を全うするには,如何に動脈硬化を防ぐかによります。今回の提言をそのまま当局が受け入れて、実施することは財政的な立場から不可能でしょうが、国民各自が健康を意識し、健康づくりに努める一助にはなるでしょう。
『苦悩病期間』を短くするには、自分の体は自分で守るしか方法がありません。若い時からきちんとした生活習慣を身につけることが楽しい老後を保障して呉れることになります。




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