Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘えーガン鬼を体から追い出した(12) NEW
2014年04月18日

防府日報(2014,4,18)
ガンと闘えーガン鬼を体から追い出した(12)
山口県立大学理事長
江里 健輔

前立腺ガンの根治手術を受け、3日後に手術創に挿入されていた管、次いで、6日後には疼痛軽減のために背中に挿入されていた硬膜外チューブがそれぞれ抜去されました。残るは導尿管のみになりました。何となく、心も身も軽くなったようですが、問題は何時導尿管が抜去出来るかであります。この管は前立腺の下にありますので、手術の時には、前立腺ガンとその下を走っている数センチの尿道も同時に摘出しなければなりません。当然ですが、残った尿道の断端は膀胱に直接再吻合されます。従って、これがくっつかないと導尿管を抜去することが出来ません。
担当医は
「まあ、一般的には手術後10日目には抜けますよ」と。
そう言われれば言われるほど、順調にくっつけば良いが、と不安になりました。
くっつかない場合(吻合不全といいます)、入院期間が長くなり、仕事に差し支える、そればかりか、膀胱炎を併発する可能性も高くなる。そう考えれば、考えるほど、気持ちが落ち込んで、憂鬱になってしまいました。家内はそのような姿をみて、盛んに話しかけてくれますが、すかっとした気持ちで相手になってやれませんでした。
術後10日目、担当医が
「導尿管が抜けるかどうか造影検査をしましょう。それで、造影剤が漏れないようであれば、その場で抜きますよ。多分、大丈夫でしょう」
と私の気持ちを案じて言ってくれた。しかし、手術後7日目より導尿管の周囲よりじわっと尿が漏れはじめ、頻回にガーゼ交換しなければならないようになったので、吻合部の一部がくっついていないのではと疑心暗鬼になっていました。
レントゲン台上に仰臥位にさせられ、導尿管より造影剤がゆっくり注入されました。担当医と私は息の詰まる思いでレントゲン写真をじっと見ていますと、造影剤が尿道から少し漏れ、尿道が膀胱と完全にくっついていないことが判りました。担当医は即座に「駄目だなあ、今日は導尿管抜抜けないなあ、もう少し様子を見よう」と申し訳なさそうにつぶやいていました。
「先生、ぬけませんか?今日駄目なら、いつ頃抜けるのでしょうか?入院が長引きようであれば、職場に連絡しておかなくちゃなりませんから」と、不安で興奮した気持ちを抑え、如何にも紳士ぶって、たわいのない質問をすると。
「そうですね。漏れている範囲が狭いので、数日後には抜けそうですよ。4日後に再検査しましょう」
とたいしたことはないよ、と言うような面持ちで物静かに話してくれましたが、自信に満ちた表情はありませんでした。
消化器手術では、胃と腸、あるいは、腸と腸とを縫って、完全にくっつかない場合には、内容物が腸管外に漏れ、腹膜炎を来たし、死に至ることがあるので、絶対起こしてはならない合併症です(最近では、中心静脈栄養法が進歩し、長期間の絶食でも十分なカロリーが補給されるようになり、従来ほど、生命に直接関与することはなくなりましたが・・・)。
こうなったら、ばたばたしてもしようがない、なるようになるさと開き直り、4日目に行われる再度の尿道造影検査に期待することにしました。開き直ると以外に気が楽になり、4日目が早く来ることが楽しみになりました。




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