Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
執筆情報 [詳細ページ]
癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘えーこれからが勝負だ(14) NEW
2014年06月19日


ガンと闘えーこれからが勝負だ(14)
山口県立大学理事長
江里 健輔

術後合併症もなく、退院。100%安全な医療はあり得ないことは十分承知していましたが、無事退院出来、感謝、感謝でした。
翌日から職場復帰と意気込んでいましたが、じっと座っていると、手術創部(肛門部)に火棒を突っ込まれたような灼熱の痛みを感じ、運転するどころじゃあありません。堪えきれず、
「ひどい痛みがあるんですが、まさか異物が残っているということはないでしょうね」
と失礼な質問をしました。担当医は別に怒った様子もなく
「あれだけの手術をしたのですから、痛みがあるのは当たりまえですよ。そのうち、なくなります。少しの間、我慢して下さい」という返事で、なすすべもありません。翌日、それを聞きつけた看護部長が「創部を保護する座布団がありますよ。これを使えば、肛門部を直接圧迫しませんので、きっと、痛みが軽くなると思いますよ。しばらく、それを使ってみられたら・・・、必要なら、注文してあげましょうか?」と申し入れて下さいました。その座布団は「U」字型で、座っても、肛門部が宙に浮いているようになるので、痛みが生じません。早速、購入し使ってみましたが、なんとなく座り心地が不安定で、落ち着きません。
アフリカで長年診療していたシュバイツアー博士は「痛みは死そのもの以上に人類にとって、耐えがたい暴君である」と述べているように体にとっては耐えがたいものです。しかし、痛みは組織の損傷や損傷される危険性があるような強い刺激を受けたときに生じる生体防御反応ですから、重要な警告信号でもあります。担当医は「あまり痛みに耐えられないようでしたら、痛み止めを処方しましょうか」と申し入れてくれました。痛みの軽減には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が最もよく使用されています。しかし、この薬を漫然と使用すると、消化管・心・腎臓などに障害が発生することがあるので、あまり、勧められた薬ではありません。膝関節の激痛で、この薬を服用し、大出血を来たし、瀕死の状態になった友人を知っていましたので、我慢、我慢でした。幸い、退院後2週間ごろには痛みも軽くなり、自分で運転出来るようになりました。
手術結果の精査のため、術後3ヶ月目に前立腺ガンのマーカーであるPSAの検査を受けました。12.4ng/dlであった術前PSA 値が0.4 ng/dlに低下し、私はルンルン気分でしたが、担当医は「下がらないなあ・・・」と不満げな、浮かぬ顔でした。私は探るように担当医の表情をみつめたままでした。
その理由は次号へ



[ もどる ] [ HOME ]