Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘えー再発への不安(17)ー別の臓器にガンが発生― NEW
2014年09月27日

防府日報(2014,09,22)
ガンと闘えー再発への不安(17)
ー別の臓器にガンが発生―
山口県立大学理事長
             江里 健輔

2個以上の異なる臓器(例えば、胃と脳、あるいは肝と肺のように)に同時あるいは異なる時期にガンが発生することが高齢者には多く見られます(多重ガン、または重複ガンと言います)。従って、相当、気をつけていないと見逃され、取り返しのつかぬ状態になります。即ち、頻回にチェックを受けることです。普通、一つのガンが見つかり、その治療を受け、全快すればすっかり安心しきってします。しかし、一旦、ガンに罹ると、ガンに罹っていない人に比べ、別な臓器にガンが発生する可能性が高いことが判っています。
突然、高校の友人から早朝に電話がかかってきました。
「手術をしてくれんか?」
と、まるで人生の終楽章を迎えたという声です。
「どうしたん?藪から棒に。風の便りで,お前が前立腺ガンの手術を受けたという噂を耳にしていたが、手術を受けたんじゃないの?」
「そうなんだ。昨年春、前立腺ガンの手術を受け、早期なので、全く心配いりませんというお墨付きを担当医から貰って退院したんだ。しかし、この3ヶ月前から、お腹(おなか)が張って、便秘気味なので、別な医師に診て貰ったところ、大腸ガンで、それも進行していると。早急に手術を受けるように、と言われたので、電話したんだ。だんだん、お腹(おなか)が張ってきて、苦しくなってきた。早く手術してくれんかのう」
その話を聞き、泌尿器科の担当医は前立腺ガンだけに目が向いて、全身を診ていないな、と即座に思いました。診察したところ、イレウス(腸閉塞)のような状態でした。緊急開腹術をしたところ、大人の拳大のガンがS字状結腸を閉塞するように存在し、更に悪いことに、灰白色の米粒大の結節が腹の中に播いたよう認められました。所謂、手術の限界を超えたガン性腹膜炎です。しかし、腸の閉塞症状だけは取って,楽にさせてやりたいと、ガンだけを摘出しました。しかし、6ヶ月後、不帰の人となりました。
このようなケースは稀ではありません。医師の専門制が確立するにつれて、全身が診れる医師が少なくなりました。前立腺ガンの手術を受けた時、既に、大腸ガンがあった筈ですが、担当医には多重ガンへの配慮ができなかったのか、あるいは配慮する能力がなかったかのどちらかでしょう。通常,ガン手術では他の臓器にもガンがないかどうか確かめ、ないと判断した時、手術を行います。私の友人はそのような配慮が為されないために、前立腺ガンだけ手術され、他臓器にあったガンが見逃され、悲惨な状態になった犠牲者の一人です。
ガンの手術を受けた患者さんは必ず、担当医に
「他の臓器にはガンがありませんか?」
訊ねて下さい。入院中に必ず精査をしてくれます。
前立腺ガンを受けた私も今でも多重ガンを忘れることなく、1年に1回、全身チェックを受けています。
自分の体は自分で守るしか方法ありません。絶えず、体の中にガンが出来るのではないかと気配りし、健やかな毎日を送りたいものです。



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