Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘えー免疫療法(19) NEW
2014年11月25日

防府日報(2014,11,25)
ガンと闘えー免疫療法(19)
        山口県立大学理事長
             江里 健輔

前号でガンの全身療法の中に免疫療法がありました。早速、読者から「免疫療法は有効なのでしょうか?」という質問を受けました。誤解を受けたようですので、補足致します。「インターフェロン」、「分子標的薬剤の抗体薬」などは効果があり、広い意味で一種の免疫療法です。
免疫細胞療法は、ガン患者さんの血液中のリンパ球を採取し、それを活性化、増殖させたものを患者さんに戻すという治療法ですが、まだ研究段階です。従って、保険に承認されていない「免疫細胞療法」は有効性が証明されていません。数年前、45才の患者さんの母親から相談をうけました。それによりますと
「2年前、息子は胆道ガンと診断され、手術を受けたくないので、薬で治す医師はいないかと探したところ、インターネットで『手術をしないでガンを治す免疫細胞療法』を目にし、早速、名古屋のその医師を訪ね、2ヶ月に1回の免疫細胞療法を受けることにしたそうです。息子は私には全く相談しませんので、どんな治療か分かりませんが、最初は体力も出てきて、調子が良かったそうです。しかし、半年前より、全身が黄色になり、体重もだんだん減少し、素人の私が見ても、明らかに進行しているのがわかります。どうしたものでしょうか?」
と言う質問でした。息子さんに会ったところ、全身が黄色、いわゆる顕著な閉塞性黄疸です。早速、今の治療が悪いとは申しませんが、黄疸を無くする手術は受けられた方が良いのでは、と進言しました。患者さんは「名古屋の先生は今、免疫薬ががん細胞と戦っているので、体力が消耗するのは当然で、そのうち、免疫薬がガン細胞に打ち勝つので、もうちょっとの辛抱と言われたので、このまま頑張ってみます」でした。患者さんには第三者の意見を聞く耳はありません。やがて、意識が朦朧(肝性脳症)となり、緊急手術となりました。
このような悲惨な例を挙げるまでもなく、人間を対象とした研究で“確実に有効”となったものはありません。承認されていない治療法は政府に届け、「治験」として行われる必要があります。この場合、治療費はいりません。インターネットなどで言葉巧みに宣伝し、1回数十万円も支払って受ける免疫細胞療法は明らかにまやかしです。
末期で、手の施しようなない場合、患者さんは「治る」という二文字に飛びつかれます。これは当然なことですが、この弱みにつけ込んで、「保険が利かないが効果がある」という言葉に惑わされないで欲しいものです。



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