Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

ガンと闘えープラセボ効果 NEW
2014年12月26日

  ガンと闘えープラセボ効果(20)
         山口県立大学理事長
              江里 健輔

私が大学を卒業し、東京虎の門病院で1年間のインターン生であった時の話しです。その時の病院長は沖中 重雄先生でした。先生は東大退官の最終講義で、東京大学医学部附属病院在任中の誤診率を発表され、その勇気を高く評価された学者で、文化勲章受賞者でした。虎の門病院でも1週間に一度の割合で特別外来診療されていましたが、沖中先生が処方された薬は大変良く効くということが評判になりました。当時は散薬が多く、「さじ加減」という言葉がもてはやされていました。果たして、どんな処方だろうと興味津々でした。ところが沖中病院長は消化薬を処方せよ」と指示され、具体的な処方箋はおつきの担当医がされていました。つまり、同じ薬を処方しても、沖中先生のような高名な方の処方は普通の医師のそれよりはるかに効果があるということです。これを医療の世界では、「プラセボ効果」と言います。最近は根拠に基づいた医療が求められるようになり、新薬や治療法の効果を検討するために二重盲検法による評価が行われています。即ち、本剤と偽薬を処方し、両者の効果を比較するものです。当然、偽薬を処方された患者には効果がないはずです。しかし、不思議なことに偽薬でも一時的には効果があることがあります。それは、患者さんの「気」、即ち、薬を飲んでいるからという「気」がそうさせるのです。
前立腺ガンをはじめ、不幸にも抗がん剤の治療を受けなくてはならない場合、その治療には効果があると信じることと信じないことで効果が異なるというデータもあります。当然信じている患者さんほど効果があります。医師が患者になると、これほど担当医を困らせる患者はいないといわれます。それは医師が医療の表と裏をよく知っており、とかく、ネガテイブにとらえ、医療を心のそこから信じないからであるとされています。
知らないことは良いことだ、と言われることがありますが、これは知らないので信用する、だから良いことなのです。
医療は信じることから始まります。今、ガンと闘っている患者さんは受けている治療が最高であると信じ、前向きに頑張ることが免疫力を高め、良好の結果をもたらします。
そのうち、きっと全治する治療法が開発されるでしょう。信じることです。




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