Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

意味のない措置「特定機能病院」取り消し NEW
2015年06月25日

宇部日報(2015,06,25)
意味のない措置:「特定機能病院」取り消し
      山口県立大学理事長
             江里 健輔
厚生労働省(以下厚労省)は腹腔鏡を使った肝臓手術後に患者死亡が相次いだ群馬大学の特定機能病院の承認取り消しを6月1日発効した。理由は病院長らが事態を把握出来ず、いろいろな面で不備があったとのことです。
「特定機能病院」は、一般の病院よりも高度な医療を提供し、研究開発や医師らの研修も行います。承認は國の「お墨付き」であるので、信頼感も高く、病院側も入るお金が増えるメリットがあります。現在、「特定機能病院」は全国で86あり、そのほとんどがどのような状況でさえ倒産することは絶対にあり得ない国公立大学病院を中心とした大学病院です。山口県では山口大学医学部付属病院だけです。
国民側からみれば、この承認を取り消すとなると、病院長も辞任し、病院収入も減り、いずれ倒産する可能性を秘めた大きな処分のように見えます。
しかし、私立大学病院を除き、國公立病院側には大きな痛手とはなりません。最大の理由は國公立大学病院のオーナーは國あるいは県・市です。赤字になっても、開設者が補填してくれますので、スタッフの給与が減るわけでもないし、職員数が減ることもありません。一方、トップである病院長は専任ではなく、兼務です。従って、責任をとって病院長を辞めますが、肝心の教授職を辞めるわけではありません。病院長になる前の状態に戻るだけ、本人には痛くもかゆくもありません。民間会社などでは社長辞任は、会社を辞めることに繋がりますので、当人にとってこれ以上の痛手はありません。同じ辞任でも天と地の違いです。
一番の痛手を被るのは患者さんです。
「特定機能病院」である大学病院は地域医療の中核を担っており、一般病院では対応出来ない難病、更には、最先端の医療技術が求められる先進医療(費用は全額自己負担となるが、一定の施設基準を満たせば保険診療と併用出来る)を提供しています。しかし、「特定機能病院」の承認を取り消されると、患者さんはその病院で高度な医療を受けることが出来なくなります。患者さんはわざわざ遠方の「特定機能病院」へ通院しなければなりません。厚労省は、今回の措置は病院に反省と改善を促すために適切であると判断しているようですが、それは大きな間違いです。

それではどうすればよいのでしょうか?
不祥事を起こした「特定機能病院」の当事者及び直属の上司には一定期間の医業停止を、病院長には兼務である教授職をも解任し、大学を辞めさせるきです。
「特定機能病院」承認取り消しは単なるマッチポンプのような措置では、いつまで経っても、トップのガバナンスが発揮されず、このような不祥事はなくならないでしょう。「命」を守るためには大喝一声の措置が欲しいものです。



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