Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

健康努力者には恩典を NEW
2015年10月24日

防府日報(2015,10,17)
        
山口県立大学理事長
江里 健輔
喫煙が原因で下肢の動脈が閉塞した65歳の男性に
「貴方の足の血管が閉塞した原因はタバコですよ。タバコをお止めにならない限り、いくら薬を飲んでも、注射をされてもなおりませんよ。意味ありません。医療費の無駄です。防府市民に多大な迷惑を掛けていることになります」
「先生、喫煙は私の唯一の楽しみです。これを止めることは出来ません。私の幸せを奪うつもりですか?」
「でも、お止めにならないと、いずれ下肢切断になりますよ。それでもいいんですか?」
「その場合は仕方ありませんね。下肢切断と喫煙のどちらかを選べと言われるなら、喫煙を選びます。先生、判ってくださいよ」
「よう判りました。それでは今日から治療もやめましょう。喫煙されている限り、いくら治療しても全く意味ありませんよ。欧米では、常識です。市民の方々に無駄な負担をかけたくありませんから。」
「・・・・・、先生は冷たいなあー」

今、国民医療費は年々増加し、平成24年は39兆2117 億円に達し、数年以内に40兆円を超えると予想されています。このうち、摂生で発生を少なくすることが出来る生活習慣病(循環器疾患、高脂血症、糖尿病、ガンなど)の医療費はなんと8兆円(8.6%)を超えています。糖尿患者数は約600万人で、きちんと受診している人は200万人、予備軍は1200〜1500万人で、その医療費は1兆2088億円(平成24年)です。
麻生太郎副総理・財務相が「食いたいだけ食べ、飲みたいだけ飲んで、糖尿病になって病院に入っているやつの医療費をおれたちが払っている」と述べています(読売新聞、2013,5,30)。いささかぞんざいな言葉ですが、実態を明確に表しています。運動したり、食事をコントロールすれば、発生を少なくすることが出来る疾患ですが、それが為されていないのが現状です。
それではどうすれば減らすことが出来るのでしょうか?
健康への自己コントロール出来ない人、あるいはする気のない人達に摂生や、早期受診を勧めても馬耳東風です。そうであれば、自己摂生している人が報われるような制度を設けるべきではないか、と考えます。即ち、生活習慣病の健診を受けている、学会が推奨している生活習慣病予防プログラムを実行している、などをポイント化し、一定のポイントを獲得した人には健康保険料の減額、あるいは、自己負担額を安くするなど何らかの恩典を付与することで、生活習慣病の発生数も減少し、医療費も抑制され、さらには、健康関連産業を推進させることになります。
健診は無駄、すべてのガンは発見された時にはすでに遠隔転移を来たしている、など荒唐無稽の意見がまかり通っている複雑怪奇な現状に対し、当局は、「早期発見・早期治療」、「予防が一番」という大きな楔を打つことが求められています。






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