Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

交渉に限界があるのか? NEW
2015年12月23日

           交渉に限界があるのか?
                山口県立大学理事長
                     江里 健輔

管官房長官は11月24日、都内で講演し、沖縄県の米軍普天間飛行場(宣野湾市)の名護市辺野古への移設に関し、「もっと県と話し合いをしろとの批判があるが、話し合いしてきたから20年前に決まったことができなかった」と述べています(読売新聞、2015,11,25)。
お互い妥協する意思がないので、交渉は決裂し、國と沖縄県の間は訴訟という戦争に突入しました。お互い想定内のことだということでしょうか?
想定内でなかったのが第二次世界大戦前の日本と英米らとの交渉です。佐藤元英著「外務官僚たちの太平洋戦争」には交渉決裂の経緯が精緻に解説されています。
「1941年9月6日の御前会議で企画院総裁鈴木貞一は次のように発言しています。
『今日の如き英米の全面的経済断交状態に於きましては、帝国の国力は日一日と其の弾撥力を弱化して参ることとなるのであります。(中断)明年6、7月頃には貯蔵が皆無となる様な状況であります(以下略)』」(原文のまま)。
開戦に導いた基本的動力は日本の武力による膨張政策であったことは間違いありません。米英は、日本経済を破滅させ、大国としての権威を失墜させ、東亜における日本の新秩序の建設を妨害することで日本の膨張政策を止めさせようとしました。所謂、経済戦争です。これにより、石油をはじめとする輸出入量が激減し、日本経済は大打撃を受けました。この結果、日本経済が生き延びるために残された道は資源の豊富な東南アジヤに侵出するか、アメリカ経済に隷属するかの二者択一となりました。一方、英米は、アメリカの9分の一の経済力である日本がアメリカを攻撃すれば日本にとって破滅的な結果になることはどんな日本人でもわかることで、まさか日本人が英米と闘う筈がないとたかをくくっていました。この過酷な経済抑止政策が、緊張激化、戦争へ突入することになった訳です。
今でも、日本は資源の少ない國です。経済封鎖されれば、あっと言う間に日本経済が破滅することは素人にも判ります。第二次世界大戦の悲惨さはマスコミらで頻回により伝えられていますが、何故起こったのか、それを防ぐ方法はなかったのか、戦争回避に向けて交渉がなされたのかなど発生原因の検証はなされていません。
この度の沖縄基地の移設問題が訴訟という最悪な事態になったことも併せ、決裂の経緯を詳細に検証し、今後の糧としないで、ただ困惑しているだけでは同じ轍を踏む危険をはらんでいるのではないでしょうか。



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