Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

人生最終段階を過ぎしたい場所は? NEW
2016年02月27日

ほうふ日報(2016,02,27)   

人生最終段階を過ぎしたい場所は?
      山口県立大学理事長
             江里 健輔

誰もが迎える人生の最終段階。末期ガンや認知症など治る見込みのない状態になった場合、あなたはどこで最後を迎えたいですか?

世界でも見られないユニークな人口構成となりつつある我が国は、国内の年間死亡者数が2025年には150万人に達すると推計されるほどの多死社会、さらには、75歳以上のひとり暮らし世帯数も1010年の270万世帯から2025年の450万世帯と急増する孤独社会になります。  こうなると、人生の最終段階を望み通りに叶うかどうか微妙になります。
「人生の最終段階における医療」に対する厚労省の指針では「本人の意思を尊重し、医師らからの適切な情報提供や説明に基づいた話合いを重視する」ことを原則としています。アンケート調査では、自分のことは自分で出来る時には居宅を希望していますが、自分のことが自分で出来なくなった時には、医療機関や介護施設を希望しています(朝日新聞、2016,02,16)。幸いにも、山口県は医療・介護の施設が整って、入所するのが大都会に比べ難しくないですが、大都市圏では施設や人材不足で自分で選んだ形の「最後の医療」を受けるのは難しく、このような人達が地方に流れる可能性もあります。従って、安閑としてはおれません。
政府は医療費の高騰で、それを抑制するため、出来るだけ在宅医療を推奨しています。たしかに、居宅の場合、家族との接点もあり、生活の選択幅も広がり、好ましいことです。
しかし、アンケートで見られるように自分のことが自分でできなくなった場合、医療・施設で最後を迎えたいという人が圧倒的に多いのは何故でしょうか?
作曲家で有名な永六輔さんの奥様は乳ガンの末期を自宅で迎えられました。永六輔さんは専任看護師を自宅に雇用し、奥様を24時間看護出来る環境を設けられ、自宅で迎えることを強調しておれらます。報道の情報ですから、真偽はともかく、財力のある永六輔さんだから出来た事で、多くの日本人に取っては高嶺の花です。

政府が在宅医療を推進するのであれば、医療機関あるいは施設で過ごすと同じような環境、即ち、冷暖房が完備され、緊急医療を受けることが出来る環境を第一に準備すべきです。冷暖房も完備されておらず、即座に救急医療にも対応出来ないにもかかわらず、在宅医療を勧めるのは国民への過酷な要求です。在宅医療を勧めるのであれば、住宅および医療環境を優先し、それらが整った後に推奨して欲しいものです。



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