Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
執筆情報 [詳細ページ]
癒やしのそよ風(ほうふ日報)

人口減少に伴う医療問題(2) ―医療事故―
2016年04月23日

ほうふ日報(2016,04,19)   
        人口減少に伴う医療問題(2)
            ―医療事故―
                山口県立大学理事長
                      江里 健輔

別表にありますように、中四国地方の病院が経験した症例数をみますと、山口県のいずれの病院もベスト5位の中には入っていません(別表参照)。
これは「コア」のない山口県と揶揄されるように山口県特有な現象です。確かに、経験豊富な医師ほど治療成績が良いということは衆知の事実です。昨年末、山口県の某病院で絶対切断してはいけない人命に係わる血管を切断し、しかも、執刀医及び助手達はその事に気づかず、翌日、下血したため、再手術してこの間違いに気づき、急遽、血管を再建したが、患者さんは不帰になられたという初歩的な事故が発生しました。これは医療事故ではなく、医療無知が招いた痛ましい出来事です。
米国ワイルコーネル大医学部ヘザー博士らの研究グループらは、直腸ガンの年間手術数が多い外科医ほど、出血や縫合不全などの外科的合併症の発生率が少ない外科医に比べ低かったと報告しています(宇部日報、2016,04,11)。このような成績を見せつけられると、経験豊富な外科医の手術を受けたくなるのが人情です。そうなると、経済的に余裕のある人は経費がいくら嵩(かさば)っても遠隔地に出向いてでも、経験豊富な外科医が勤務している病院で手術を受けたがるようになります。しかし、一般の方々にはそのようなことは出来ません。此処に、貧富の差で受ける治療に差が生じることになります。ご承知のように、日本では医療被保険者証があれば何時でも、何処でも自分が選んだ病院で治療を受けることが出来、この面では医療格差の少ない国と言えますが、残念ながら、受ける医療の質の面では地域格差があることは歴然たる事実です。人口減少が進むにつれて、各病院の患者数が減ってきますので、この傾向はますます増長します。各病院は患者数を増やそうと血眼になっています。その弊害が群馬大学医学部付属病院で発生しました。群馬大学の近くには東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県など人口密集帯があり、これらの地域には経験豊富な病院が沢山ありますので、患者さんはそのような病院へ受診します。この大学の手術死の多発の原因は追い越せ、追い抜けという焦りがあったためとしか考えられません。
このような医療格差をなくするには、機能の集中と分化に基づく病院再編しかありません。行政、医療、県民が一体となって高度な医療の質を提供する環境づくりに着手することが喫緊の課題です。










[ もどる ] [ HOME ]