Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

―住むところで受ける医療が異なるー NEW
2016年05月19日

ほうふ日報(2016,05,14)
人口減少に伴う医療問題(3)
―住むところで受ける医療が異なるー
       山口県立大学理事長
                江里 健輔

病気には罹りたくなく、中でも、脳卒中だけは避けたいものです。何故なら、不適切な診断・治療で不帰になるか、救命されたとしても半身不随のような障害が残る可能性が大で、その後の生活と質(QOL)が著しく損なわれるからです。
脳卒中には脳出血と脳梗塞があります。前者は脳の血管が破れ、脳内に出血するもので、後者は主に血の塊(血栓と言います)によって、血管が閉塞され血流が流れなくなり、脳細胞機能が障害されるものです。ちなみに、医療介護を受けるようになった原因疾患の多くは脳卒中で、20年後には300万人に達すると予想されています。このような脳機能障害を残さないようにするには早期診断・早期治療しかありません。要するに時間との闘いです。脳梗塞では血管に詰まった血栓を溶かす薬「t―PA」が開発され、治療成績は著明に向上しましたが、ただ、発症後4時間以内に末梢静脈、あるいは8時間以内にカテーテルから詰まった血管に投与しなければなりません。飯原弘二教授は、症例数の多い全国749病院について専門医数や診断機器の整備などを点数化(25点満点)したところ、19点以上の病院は東京、大阪及び福岡などの大都市に限られ、鳥取県などには一施設もなく、当然、この差は治療成績に影響し、「住む場所によって、受けられる医療の質に差がある」と報告しています。このような医療環境格差が生じた原因は医療および行政関係者の対応遅延にあります。しかし、各病院が、患者数の少ない疾患を対象とする専門医師や医療機器を整えることは病院経営上容易ではありません。山口県には救急ヘリが装備されていますので、アクセス面では早期診断・早期治療環境は整っていますが、問題は医師の偏在です。山口県では、主として山口大学医学部付属病院から医師が県内各病院に派遣されています。しかし、脳外科専門医が常勤している病院はいろいろな原因で限られています。このような医療環境で、脳卒中のような救急疾患に対応出来ているかどうかは問題のあるところです。



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