Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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何故、「ボケル」のでしょうか?予防法は? NEW
2016年07月20日

鴻輝新報(2016,07,20)
何故、「ボケル」のでしょうか?予防法は?
山口県立大学理事長
江里 健輔
奇妙なタイトルと思われるでしょう。何故、人が「ボケ」るって、当然だよ、歳をとるからだよ、じゃ、歳をとると、何故「ボケル」のでしょうか?と尋ねると多く人が「うん?」と頭をひねられます。そうです。判らないんです。
「うちの嫁はけちん坊だから、食事も十分与えてくれないのよ」
と88歳のお婆ちゃんが近所のお婆ちゃんに嘆く。
「隣のお嫁さん、お婆ちゃんにろくに食事を与えていないようよ。お婆ちゃん、可哀想」
と悪いお嫁さんという風評が飛び交いすることになります。でも、本当なのでしょうか?

膝が痛い、腰が痛い、夜寝られない、夜寝ていても排尿のため起きなきゃいけないなどの現象は高齢者の特徴で、その原因の大半が血流量の減少によるものです。血流量が減る原因として単なる加齢をはじめ多種多様なものがあります。
100歳以上の方は2000年ごろから急速に年々増加し、2015年には6万1568人となりました。それに伴い、「ボケル」方も増え、2015年には525万人に達し、この状態で増加すると仮定すれば、2060年には1154万人に達しようと推測されています。「ボケ」の代表的な疾患は認知症ですが、この原因は脳細胞変性、脳血管障害、脳外科疾患などさまざまで、これらの中でも恐ろしく、危険な病気がアルツハイマー病や脳梗塞です。アルツハイマー病は1906年アロイス・アルツハイマーが通常とは異なる精神疾患が原因で死亡した女性の脳組織の異常に気づき、彼の名にちなんで名付けられた病気です。この疾患は記憶や思考能力がゆっくりと障害され、最終的には日常生活能力が失われるもので、脳血管の閉塞で生じる脳梗塞とは大違いです。
何故、脳組織が異常になるのかは判っていません。諸説としては加齢によって神経細胞(ニューロン)が侵されるとかアポリポ蛋白ε4が脳細胞に沈着するためとか言われていますが、定説はありません。統計的には糖尿病、高血圧、肥満、運動不足、喫煙、うつ病などがアルツハイマー病発生のリスクを高めるとされていますので、遺伝、環境、生活習慣などの複数因子が絡み合って発生していると思われます。
しばしば、最近物忘れがひどくなったので、認知症ではないでしょうかという不安を持って相談される方が増えました。ちなみに、加齢に伴う物忘れは体験の内容を忘れますが、体験そのまのを忘れることはありません。それに対し、認知症では体験そのものを忘れます。簡単に申せば、認知症では夕食を摂ったことを覚えていませんが、物忘れは何を食べたかは忘れますが、夕食を摂ったことは覚えています。したがって、物忘れでは思い出そうと努力し、何かきっかけがあれば思い出します。
アルツハイマー病の原因は分かっていませんので、有効な予防法はありません。唯、生活習慣などが発症リスクに絡んでいますので、いろいろな予防法が推奨されています。
それは次回に紹介いたしましょう。



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