Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

人口減少に伴う医療問題(5) ―症例を増やせー NEW
2016年06月23日

                   (防府日報2016,6,23)    
      人口減少に伴う医療問題(5)
       ―症例を増やせー
        山口県立大学理事長
              江里 健輔

すべての病院は患者数、手術件数、検査件数などを増やすことに悪戦苦闘しています。これを達成するにはなんと申しても、万難を排し、医師を確保することです。では病院がどのようにして医師を確保しているか、その一端を紹介しましょう。
医師になるには、医学部(6年間)を卒業し、医師国家試験を受けます。これに合格すると、医師免許証が交付されます。しかし、医師としての臨床能力はゼロです。そこで、2年間、研修医指定病院で初期研修をします。その後、外科なら外科、内科なら内科と希望する専門領域の診療科に入り、知識・技術を習得します、多くの医師は教育・研究が充実している大学病院で研修を始めます(これを入局するといいます)。領域によって異なりますが、外科の場合、一人前になるには約10年ばかりかかります。その後、各人の人生設計に応じて進路を決めます。
大学は教授、准教授、講師、助教、医員、その他のスタッフで構成され、人事権をはじめ運営は教授に委ねられていますので、教授は絶対的な権力を持っています。従って、関連病院への出向は教授の意向で決まりますので、関連病院長は医師確保のため、医局に日参しなければなりません。
例えば、こんな話しがあります。
X大学病院のS教授は、全国学会の会長に就任したいという野望を持っていて、そのためには、研究データになる手術件数を増やし、見るべき研究成果を達成しなければなりません。そこで、S教授は
「関連病院は手術をするな、全て大学病院に紹介せよ。もし、この方針に従わない場合には、医師を派遣しない」
という指令を関連病院に発信しました。関連病院長はS教授の方針に従わなければならないし、さりとて、手術が出来なくなると病院収入が減り、病院経営に支障をきたすようになるという板挟みになりました。最終的には、多くの病院長は経営を優先し、独自で医師を確保することを決断しました。当然ですが、各病院は医師確保に四苦八苦ですが、現状では細々となんとか地域住民のために、試行錯誤しながら診療している状態です。
このように関連病院の医師確保は一人の教授の意思に左右されています。不思議な世界で、おかしいと思われるでしょう。でも、それが現実です。
次回はS 教授が行った関連病院医師確保妨害の話しを致しましょう。



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