Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

人口減少に伴う医療問題(9)〜紹介が減収に繋がる〜 NEW
2016年10月29日


人口減少に伴う医療問題(9)
  〜紹介が減収に繋がる〜
山口県立大学理事長
江里 健輔

人口減少に伴って、外来患者数が年々減少し、破産する病院・診療所が増えています。そのため、一人当たり医療費を上げるために、過剰な検査、患者の引き留めという悪弊が蔓延しようとしています。
「先生、私の住んでいる近くに総合病院があります。紹介して下さるなら、その病院に紹介してもらえませんか?」
「そうですね。その病院でも良いですが、貴方の病気の専門家を私はよく知っています。彼と私とは昵懇のあいだ柄ですので、丁寧に対応してくれると思います。ちょっと離れていますが、後々のために、その医師の治療を受けられた方が良いでしょう。どうでか?」
「そうですか?その病院には新幹線を使って行かなければなりませんので、経費がかさみます。1日仕事になりますので、どうにかなりませんか?」
「医者を選ぶのは貴方の勝手です。貴方の希望される医師にどうしても掛かりたいと言われるなら、その医師を知りませんので紹介状を書くということは出来かねますが。それでもよろしければ、その病院に転院してください」
と急激に腹立たしい声に変わりました。
「そうですか?分かりました。先生が言われるところに受診しますので、紹介状、よろしくお願い申しあげます」
その話しを聞いて、その医師に問い正したところ
「江里先生は公的病院に勤めているから、我々の苦労はわかなないでしょうね。年々、外来患者数減少のいう波をもろにかぶって、四苦八苦しているんですよ。江里先生が勤めている病院に紹介すると、もう私のところには返ってきませんので、大切な一人の患者さんを失うことになるんです。でも遠く離れた病院に紹介すれば、必ず、また受診してくれるんです。あまり勧められることではないと重々分かっていますが、経営の為には仕方ないと思っているんですよ」

日本は間もなく「多死社会」を迎えます。2025年には団塊の世代が75歳以上となるので、年間死亡者数は現在より20万人増えて、150万人になると推計されています。これらの人達はこれまでは外来患者でありましたが、重篤になると、入院あるいは在宅医療となるため、必然的に外来患者数が減少します。
医師が患者のために良医を紹介するのであれば、なんら問題ありませんが、紹介が減収対策のために為されるとすれば、許されることではありません。
読者さんも遠路の地にある病院を紹介される場合には、「何故」と一考することが必要です。



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