Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

人口減少に伴う医療問題(11 〜高齢者に対する高脂血症の治療〜 NEW
2016年12月16日

   人口減少に伴う医療問題(11)
   〜高齢者に対する高脂血症の治療〜
        山口県立大学理事長
             江里 健輔

人口減少と言われていますが、問題は減少したのは生産年齢層(15〜64歳)で、逆に後期高齢者が年々増加していることです。藻谷氏によれば、日本の80歳未満の人口は,2000年をピークに減り始め、最近5年間では273万人減少しています。同時期の首都圏の総人口は51万人増えましたが、80歳以上の人口は増えています(毎日新聞、2016,12,4)。この傾向は団塊世代が80歳を越え終わる15年後まで続くと予想され、こうなると、当然、医療も様変わりせざるを得ません。
例えば、コレステロールが高いと心筋梗塞など循環器疾患で早死にすると言われ、コレステロールを下げることが推奨されています。しかし、それに反駁するようなデータもあります。
コレステロール(mg/dl)値を
T群(男性:〜169、女性:〜194),
U群(男性:170〜189、女性:196〜219)、
V群(男性:190〜219、女性:220〜249)、
W群(男性:220以上、女性:250以上)
に分け、70歳以上の血清コレステロール値(mg/dl)と10年生存率との関係を調査したところ、コレステロールの低いT群の人の生存率が一番悪いことが分かりました(別図参照、和田秀樹:現在の医学界の問題点、経済倶楽部講演会第4162回、2016,6,3)。この研究を見る限り、中より高めのコレステロール値を示す高齢者の方が長生きするといえそうです。老人病の一つであるガンは、免疫力が低下した老人に多く、79歳以上の高齢者には40%発生します。従って、コレステロールは免疫に関係する生体膜の重要な成分であることより、この値が低い人では免疫力が弱いため、ガンが発生し易いとされています。逆に、コレステロールの高い人はガンに罹り難いということです。
コレステロール値が高いから、下げなければ心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患で死亡するという医学的な常識は必ずしも高齢者には当てはまらないようです。疾患に対する治療基準が若年者と高齢者とが同じであることは正しくないかもしれません。少子高齢社会になれば、特に後期高齢者には綿密な治療をしなければならない時代になりました。



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