Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

禁煙は医療費削減に繋がるか? NEW
2017年02月23日

 防府日報(2017,02,13)  
      禁煙は医療費削減に繋がるか?―
               山口県立大学理事長
                     江里 健輔

「病気になったら、お金がいる。若い時にしっかりお金を貯めとけよ」
親父の口癖でした。また、学生時代、たばこを吸っている私の姿を見て
「煙を吸って、体に悪いのに、その上、無駄使いするのう。1日1箱で、1箱120円とすると、1年で4万円ばかりかかる計算になる。一生涯吸うとすれば馬鹿にならない額になるのう」
と、50年前嘆いていたものです。

高齢化で、医療費が年々右肩上がりなのに、それを負担する若者が高齢者に比べ、増えないので、日本経済が破綻すると医療費削減に当局は躍起になっています。ちなみに、平成27年度の国民医療費は約41.5兆円で、前年度に比べて約1.5兆円増えています。一方、現役世代人口(15歳以上)を支え手とすると、65歳以上を支える人は2015年2.3人で、更に2060年では1.3人になると推計されています。この数字をみれば、確かに、お金を貯めておかなければ、豊かな老後は過ごせそうもありません。
そこで、当局は禁煙対策、メタボ検診、ロコモ予防対策、ガン検診などいろいろな施策を積極的に推進しています。いずれも医療費削減とQOL(生活の質)の向上、寿命の延長を期するものです。

その一つが禁煙対策です。
禁煙が医療削減に繋がるでしょうか?答えは「ノー」です。
喫煙者の平均寿命は非喫煙者に比べて10年短く、喫煙者の40%は69歳までに心筋梗塞や脳卒中、ガンなどの喫煙関連疾患で死亡されます。従って、69歳以下の医療費は減りますが、非喫煙者は長生きされますので、70歳以上の方達の医療費が増えるからです。結局は医療費を先送りしたに過ぎません。
人は誰でも健康(健康寿命)、次いで何らかの病(不健康な期間、男性9.1年、女性12年)を得て生涯を終えます(平均寿命)。具体的なデーターはありませんが、高額の医療費を必要とする期間は「不健康な期間」です。禁煙で
「不健康な期間」が短くなるということが証明されれば、医療費削減の効果があると言えます。
長生きはいいことですが、終末期の医療の在り方をリセットする時代に入っていると思います。



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