Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

何故、県外で治療を受けるの? NEW
2017年04月22日

ほうふ日報(2017,04,22)   
        何故、県外で治療を受けるの?
               山口県立大学理事長
                       江里 健輔

「地産地消」、県内で生産し、県内で消費しましょう、これで地域が活性化するということで、盛んに推奨されています。このことは医療の領域でも通じることです。
数年前のことですが、ある著明な政治家の方(仮称長尾)が
「先生、どうも腹にこぶができているようじゃ。精密検査をしてくれんかね」
と問い合わされ、検査したところ、胸部腹部大動脈瘤でした。このまま放置すれは破裂し、即時「死」となりますよと説明しました。
長尾さんは
「そうか、治療せんにゃ死ぬるか。そうなら任せるから治療してくれ」
と言われました。でも、著明な方だったので、
「県内で治療を受けられますか?長尾さんのような著明な方は東京などの有名な病院で受けられなくて良いでしょうか?」
と心にもない言葉を発しました。
「先生、何を言うんですか?俺は県内の医療の質を高めることのできる立場の人間だ。そのような者が県外で治療受けるわけにはいかんよ。治療を県内の病院で受けないということは俺達政治家が県民に信頼される病院作りをしていないという証拠だ。まあ、政治家としては情けない話しだな。俺はそういう政治家になりたくないよ。だから頼むよ」
と言われました。
私は大学卒業以来、ずっと山口県内病院で働いてきました。その間、病院施設を作ることができる立場の著明な方々が病気になると東京などで治療を受けら、忸怩たる思いをしてきました。
ある県民の方が
「先生、山口県の医療レベルが低いので偉い人はみな県外の病院で治療を受けられるんですね。と言うことは“県民はレベルの低い病院で我慢せい!。俺達は高度医療を備えている大都市の病院で治療を受けるから”と言っているようなものですね」
と厳しい質問を受けたものです。これには医療人にも責任があります。県内のある病院長がセカンド・オピニオンを要請され、なんと東京の病院まで赴き、セカンド・オピニオンを受けたという話があります。甚だ情けない話ですが、この病院長はおのずから県内の医療レベルを卑下していると言われても仕方ありません。私なら家族を説得し県内病院でセカンド・オピニオンを受けるように方策したでしょう。長尾さんのような方が山口県内の病院で治療を受けるのは当然だという信念に頭が下がる思いです。
山口県医療が高度先端医療のような特殊な領域では大都市と同等と申しませんが、標準的な医療レベルは東京など大都市に劣るものではありません。高いお金を払ってまで、東京や大阪に赴く必要はありません。
県内病院で安心して治療を受けて欲しいものです。



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