Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

考えてみませんか?これからの事A ―食べるものがなくなるー
2017年10月31日

宇部日報(2017,10,31)
        考えてみませんか?これからの事A
       ―食べるものがなくなるー
                山口県立大学理事長
                      江里 健輔

私事で恐縮ですが、私の家の家業は農地面積1.5ヘクタールで生活を支えている農家でした。小学校時代には梅雨時期には田植え休み、秋には稲刈り休みがあり(約2週間)、牛や脱穀機などを使い、真夏には四つん這いになり額から汗を流し、ながしながら稲田の草を取ったものです。子供とはいえ、家計を助ける一労働者でした。それでも生計には不充分な収入で、父親は大工(今ではしゃれた言葉で『工房』といいます)で、家計の足しにしていました。自宅の隣の主人は農業協同組合の職員でした。私達一家は、全員が農業に従事し、やっと自活できるのに、この主人は8時出勤で5時には帰宅され一人で一家を支えていました。私一家が農作業を終え、帰宅する夕方7時ごろには入浴、夕食をすませ、煙草をふかし、ゆったりとされていました。まだ小学生(昭和25年ごろ)であったにも関わらず、農業をしたこともない人が農家をコントロールしているのはおかしいと思い、一方では、一生涯うだつが上がらない職業、それは農業だなと思ったものです。
それから50年、今や日本の農業は瀕死です。その原因は農業就業人口の減少、農業就業人の高齢化、農地面積の減少です。
@ 農業就業人口:2010年260万4000人でしたが、
2015年には209万7000人と約50万9000人減少。
A農業就業人の高齢化:平均年齢は1995年59.1歳でしたが、2015年には66.4歳と約20年間で7.3歳と高齢化。
B農地面積の減少: 1961年608万6000ヘクタールでしたが、2015年には449万6000ヘクタールと約161万ヘクタールの減少。減少した農地の大半は荒地農地となり、再生不可能になりつつあります(河合雅司:未来の年表、講談社現代新書、2017より引用)。
日本は人口減少で、食物の需要は年々減少してきていますが、それでも世界最大の食糧輸入国で(財務省貿易統計によれば2014年自給率はカロリーベース39%)、お膳に用意される食物のほとんどが輸入品です。一方、世界の人口は着実に増え、2030年は85億人に達すると推測されています。こうなると、日本は輸入に頼れなくなります。
そのためには、若者に私が味わった農業への嫌悪感と失望感をなくさせ、興味を持たせ、豊かな生活を保証するシステムを設けることです。



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