Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

―住宅が健康に影響するって本当― NEW
2017年12月22日

宇部日報(2017,12,22)
考えてみませんか?これからのことをC
  ―住宅が健康に影響するって本当―
山口県立大学理事長
江里 健輔

「ヒートショック」という言葉をご存知でしょうか?この言葉は医学用語ではありません。建設業界や暖房メーカーで使われ、一般に膾炙されてきました。しかし、この現象の恐ろしさはあまり知られていません。
真冬の話。私の友人が緊急手術で遅くなり夜中に帰宅し、入浴しようと風呂場に片足を入れた途端倒れ、「すぐ、救急車を呼べ」と言い残し意識消失しました。原因は脳梗塞。 典型的なヒートショック現象です。機転の利く友人はさっと風呂の栓を抜いていましたので、溺死にはいたりませんでしたが、半身不随でQOL(生活の質)が著しく低下し、不便な日常生活となりました。
ヒートショック現象とは急激な温度変化によって体内血管が急激に伸縮し、血圧や脈拍が変動し、悩卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を突発的に生じるものです。ヒートショック死(入浴中の事故死)は年間1万9000人以上と報告されています。交通事故死(4000人/年)と比較すれば、看過出来ない由々しき問題です。
伊香賀らは寒冷な住まい(部屋の温度18℃以下)に住んでいる人達の10年後の高血圧発病率は暖かい部屋(部屋の温度18℃以上)に住んでいる人達に比べ、約7倍と報告しています(JST科学技術振興機構「健康長寿を実現する住まいとコミュニテイの創造」社会実証事業)。心及び脳疾患による冬期自宅死亡率は北海道より四国、中国、近畿が高く、原因は暖房施設が北海道より四国、中国、近畿の方が稚拙であるからだとされています。確かに、居間は暖房していますので室温も23℃と温かいですが、居間以外の部屋は暖房していませんので、冷たく温度差が約10℃以上という住宅が一般的です。特に、脱衣場、浴室では裸になりますので、体温が下がり、血圧が高まり、次ぎに入浴しますので、高温に曝され、血管が拡張し、血圧が下がります。このような血圧の変動が心・脳に過剰な負担をかけ、突然死となるのです。
今、国土交通省は突然死を少なくするために、補助金を供与し、室温度差のない住宅づくりを推進しています。
室温度差のない住宅づくりで、この冬を乗り切られたら如何でしょうか?



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