Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

臨死体験と笑顔 NEW
2018年01月27日

ほうふ日報(2018,1,26)
        臨死体験と笑顔
         山口県立大学理事長
              江里 健輔

高齢者や認知症の方々の笑顔が神仏の贈りもののように映るのは私だけでしょうか?
40年前ごろ臨死体験をした友人の話です。
28歳の時、急性汎発性腹膜炎に罹り、長い高熱にうなされ、意識朦朧の状態が4日間続き、奇跡的に回復し元気になりました。彼がこの間、奇妙な夢(?)を見たと楽しそうに話してくれました。
目の前にまったく汚れのない、澄み切った青い川の向こう岸に美しく着飾った若い女性が「おいで!おいで!」と手招きしている光景が映った。こちらの岸には褌をした男性たちが
「旦那さん、向こう岸には綺麗なお嬢さんが手招きして待っていますよ。私が肩車で向こう岸までお連れしますので渡られませんか?安くしときますから」と。向こう岸の女性達の美しさにほだされ、渡りたいと思って、ふところに手を入れ、所持金を調べたところ持ち合わせのお金がほとんどなかった。
「運び賃はいくらなの?」
「そうですね、今日は風が吹いて、少し波が荒いので、割り増しで高いですよ」
「そんなお金はないんで、止めとくわ」
「それは残念ですね、二度とないチャンスなのにねえ」
「運び賃、貸してくれませんか?そうしたら渡ってもいいですよ」
「生憎、現金商売で」
この会話が最後で目が覚めた。目が覚めても心が洗われ、無常の安堵感にひたった、でもあの時、お金があれば現世に戻ることはなかっただろうと。同じ臨死体験した別の女性は霞がかかり、花一杯に満たされ川を盛んに「渡りましょう、渡りましょう」と美しい若い女性が誘ったという話しをしてくれました。
医学が進歩し、心停止を来たした人でも回復するケースが増えてくるにしたがい、臨死体験する人達が増えてきているようです。
臨死体験の内容には個人差がありますが、いずれも心の安らぎと静けさ、言いようのない心の安堵感を感じる場合が多いようです。
この世に「生」を受けた時、「死」は既に約束されていますが、幾つ年をとっても「死」は怖いもの、だから死にたくないという願望が生じるのです。それに反して、物事を判断し、認知出来ない高齢者の人達の笑顔に「死」の恐怖感がなく、神仏のような優しさと幸せ感を我々に感じさせてくれるのは毎日が臨死体験中なのでしょうか?



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