Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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その他

あなたの体はサビついていませんか? NEW
2018年09月22日

雄飛(2018,9,22)
あなたの体はサビついていませんか?
山口大学・県立大学名誉教授
江里健輔

「歳は取りたくないなあ」という会話をよく聞きます。何故なら、「歳を取る=老化=自立が難しくなる=人に迷惑をかける」からでしょう。
何故、老化するのでしょうか?
それは細胞が「サビ」つくからです。ぼろぼろに「サビ」ついた鉄を思い出してください。年輪を重ねるにつれて、これと同じ現象が体を構成している60兆の細胞に起こって来るのです。

最近、「活性酸素」という言葉を頻回に耳にするようになったと思われませんか?この「活性酸素」が体内で過剰に作られるケースが日常生活で多くなったからです。元凶は環境汚染です。1970年代から大気、水質、土壌などが、長い地球の歴史でもなかったほど汚染され、そのために「活性酸素」が過剰に産出され、人体にさまざまな障害を来すので注目されるようになったのです。ちなみに、私が医学生の昭和30年代には「活性酸素」という言葉も聞いたこともありませんでしたし、講義で教わったこともありませんでした。

「活性酸素」とはなんでしょうか?
なかなか難しい用語ですが、簡単に言えば、いろいろな物体を酸化させる力が非常に高い酸素のことです。
「活性酸素」は、好中球(白血球の中にある顆粒球)や食細胞内で作られ、体の中に侵入してきた細菌、カビ、あるいはウイルスにくっついて酸化させ、これらを体から除去する作用があります。体にとってなくてはならぬ極めて重要な役目を果たしています。しかし、不安定で、ほかの物質と反応しやすい“落ち着きのない細胞”です。従って、「活性酸素」が過剰に産出されることになります。過剰な「活性酸素」は、体内の正常な細胞を「敵」と見なし攻撃し、傷つかせ、さまざまな疾病を発生する悪い面も持っています。勿論、体内では体を守るために過剰な「活性酸素」を除去する抗活性酸素酵素も作られていますので、日常生活では両者のバランスは保たれ、体質的に「活性酸素」が過剰に作られるケースは極めて稀です。しかし、多量な加工食品、紫外線、放射線、ガンを誘発する農薬、DNAを壊す殺虫剤、排気ガスなどに見られるように、生活が進化し、日常生活が複雑化するにつれて環境汚染が強まり、それに伴い、「活性酸素」が過剰に増え、細胞を傷つけることになります。その代表的疾患が高齢者に多く見られる動脈硬化症です。これは、コレステロールや中性脂肪を多く含む食品を多量摂取すると、脂質が「活性酸素」と反応して過酸化脂質に変わり、血管の壁に付着し、コレステロールや中性脂肪を取り込み、血管を脆くして、血流の流れを阻害し、臓器不全をきたす病気です。

過剰な「活性酸素」を体内から除くにはどうすれば良いでしょうか?
理屈では、抗活性酸素酵素を活性化すればよいのですが、40歳を過ぎるとこの酵素の活性が低下してきますので、簡単ではありません。人間の寿命を決定する因子の50%は食事、喫煙、運動などの生活習慣と言われています。「活性酸素」の過剰発生を抑制するには規則正しい生活をすることです。まず、血管壁を破壊するタバコを吸わない、皮膚細胞内で活性酸素が発生して、肌の老化を引き起こす紫外線をむやみに浴びない、額に汗がにじむ程度の軽い運動、即ち、有酸素運動を行い、一方では、呼吸量が増え、「活性酸素」の発生を増やす激しい無酸素運動を控えることなどです。食習慣としてはビタミンE,C、A,赤ワインやブルーベリーなどのポリフェノールなどの抗酸化物資を摂取することも推奨されます。健康グルメの時代ですが、食欲に任せて自由奔放(?)に食物を摂るのではなく、活性酸素のことも頭にいれて食習慣を整える努力をすることが重要です。細胞の「サビ」を少なくすることが出来れば、老化を遅らせる事になり、健康寿命を伸ばすことが可能となります。
健康を獲得するにはそれなりの努力が必要です。食べたい物も我慢してまで、生きたくないと申される人は一度介護療養院を訪問されたら如何ですか?苦しむことなく、第三者に迷惑をかけずに「死」することが如何に難しいか理解されるでしょう。
自分の体は自分で守るしかありませんネ。



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