Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

何故定員埋まらないの?「医学部地域枠」 NEW
2018年11月30日

 何故定員埋まらないの?「医学部地域枠」
    山口大学・県立大学名誉教授
  江里 健輔
ある日の早朝
「早期ガンと診断されましたが、どこの病院で治療を受けたら良いでしょうか?ホームページを見ますと、東京のA 病院では多くの胃ガンの手術が行われ、内視鏡手術も沢山行われています。A病院で治療を受けたいですが、紹介して頂けませんでしょうか?」
という問い合わせがありました。
そうです!!患者さんは経験豊富な病院、即ち、沢山の患者さんを治療している病院で治療受けたいのです。2,3の例外を除いて、経験豊富な病院は大都市に限られています。若い医師達は高度な技術を習得したため、大都市に集中し、地方に定着する若手医師が少なくなり、医療の質の格差は年々大きくなってきています。
政府は医師不足の地域での人材確保をするために、全国の医学部に「地域枠」を設けました。しかし、過去11年間に合計定員6533人のうち、844人が欠員でした(讀賣新聞、2018,10,24付き)。
医学部「地域枠」とは、自治体からの奨学金の返済免除と引き換えに一定期間(通常、9年間)、地域医療への従事を義務づける制度です。この9年間に未熟な医師にとっては、過疎、離島などに間歇的に出向し、医療を行うことは極度なストレスで、その上、患者数も少ないので、専門医の資格を取得することも容易ではありません。即ち、「地域枠」を選択した若い医師に優れた医療技術を修得することは断念しなさい、風邪などの平凡な疾患を診る医師になりなさいと決めつけているようなものです。それに対し、患者さんは年々専門思考で、専門医でないと信用しない風潮になっています。通常は医学部を卒業後10
年間ぐらいは、厳しい、辛い研修に耐えながら、技術を習得します。このゴールデンタイムに地域医療に従事させるのは、光輝く可能性のある原石を泥石にするようなものです。当局はその現実を考え、「地域枠」制度を見直さない限り、「地域枠」の欠員は解消しなでしょうし、医療人としての野心のある若者を駄目にしている「地域枠」制度を廃止すべきです。
日本は長寿社会になりました。65歳定年で、退任した勤務医の多くは元気で、活力もありますが、残念なことに、介護医療型施設や介護老人保健施設のような慢性期医療病院に従事しています。今こそ、経験豊富で、全身管理では若い医師以上の能力がある彼等を活用すべきです。



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