Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
執筆情報 [詳細ページ]
風のとき(宇部日報)

不摂生な病気に基づく医療費の負担 NEW
2018年12月21日

宇部日報(2018,12,21)
考えてみませんか?これからの事O
   不摂生な病気に基づく医療費の負担
       山口大学・県立大学名誉教授
               江里 健輔

日本の一流新聞社説に
「某大臣が、不摂生な病気になった人の医療費を負担するのは『あほらしい』という知人の言葉を紹介し、『いいことを言う』と述べたのは、健康な人を含めて医療費を分かち合う社会保険制度の基本への無理解を示すものだ」
と、非難していました。

そうでしょうか?

確かに社会保険制度の基本は収入に応じて医療費を負担することで、この基本が崩れると、この制度は破綻します。それには異存ありませんが、「自分の健康は自分で守る」という自意識が同じ線上にあることが条件になるのではないでしょうか?
例えば、タバコは害あって益なしいうことは医学的にも証明されています。タバコの煙には70種以上の発がん物質が含まれ、タバコを吸い続けている男性は、吸わない男性に比べ、肺ガンで死亡する危険性が4.8倍、食道ガンで3.4倍、また、呼吸器疾患が他人のタバコを吸い込む受動喫煙者に多発するというデータもあります(読売新聞、2017,11,11付け)。一方、喫煙が原因で余計にかかった医療費は1兆4900億円で、国民医療費の4%近くを占めており、その上、ガンなどの病気で入院を余儀なくされ、働けないことによる経済的損失額は2493億円であったと報告されています(日経新聞、2017,5,31付け)。
昭和40年代にはガンの早期診断は極めて困難でしたが、平成時代には、CT、MRI、PETなどが開発され、検診などを受けますと、早期診断が可能になり、その上、医療費も進行ガンに比べ安価です。それなのに、検診受診率は低く、特に、山口県の平成27年度受診率は14.1%と低く、断腸の極みです。
このようなエビデンスがあるにも拘わらず好きなだけ酒を飲み、タバコを吸い、アンバランスな食生活、ふしだらな日常生活で病気に罹った人の医療費を健康保持に日夜努めている人が負担しなければならないということはどう考えても不条理ではないでしょうか?
公たる一流新聞の非難を「そうですか?」と納得することは摂生に努めている方々への冒涜と言えます。



[ もどる ] [ HOME ]