Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

不測への備えは?
2019年01月23日

宇部日報(2019,1,20)
      考えてみませんか?これからのことP
     不測への備えは?
山口大学・県立大学名誉教授
  江 里  健 輔

私の友人は自家発電、自家地下水汲み上げ装置を持っています。
友人に
「自家発電や地下水汲み上げ装置をどうして持っているの?これらのライフ・ラインは公共施設等で確保されているから、無駄じゃないの?」
と訊ねたところ、友人曰く
「お前は公共施設等を信頼しているから、そのような愚問を投げかけるんだよ。この度の周防大島町を見てみい、数ヶ月も断水したじゃろう。多くの島民は、生命線である水がたった一本の銅管で補給されていることを初めて知り、インフラが如何に貧弱だったかということを思い知らされたと思うよ。このように、不測の事態が何時起こっても不思議はないよ。そのための準備だよ。まあ、使わなくて済めばそれが一番幸せだがね」
と自家施設を持つのは当然のような返事でした。
そう言えば、厚東川ダムがある小野湖周辺を散策すると、年に1回は湖水の底肌が姿を現すことがあります。“こりゃやばい”なと思いながら、一方では、その内、何時か雨が降るだろう、ダムが枯渇したら、当局がどうかしてくれるだろうと呑気なものです。
不思議なことに、日本には「緊急事態条項」がないそうです(百田尚樹:日本国紀より)。ご存知のように日本人には昔から言葉に霊が宿ると考える「言霊(ことだま)主義」があります。即ち、言葉には霊力があって、祝福を述べれば幸福が宿り、呪詛(じゅそ)を述べれば不幸が襲いかかるという信仰です。確かに、不吉な言葉を発すると反発を受けます。その典型的は例が結婚式の祝辞に「去る」とか「別れる」という不吉な言葉は禁句です。「起こって欲しくないこと」は「起こらない」と考える「言霊主義」が今の厳然と根強く残っているから、緊急事態への対応が極めて甘くなっているとのことです。
友人のように、自家発電、自家地下水汲み上げ装置を設ける資力のある市民は多くありません。殆どの市民が「当局がどうかしてくれるじゃろう」と安閑としています。

地震・津波の避難場所は確保されています。同じように、ライフ・ラインが危機的状態、例えば、厚東川ダムが枯渇しそうになった時、「節水をしましょう」というと呼びかけではなく、「万が一、枯渇しても、当局は万全な対策を講じていますので、心配無用ですが、節水に心がけてください」という呼びかけが欲しいものです。
是非とも、第二、第三の対応を!!



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