Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

「いのち」を見殺しにしないで!! NEW
2019年03月06日

宇部日報(2019,2,20)
     考えてみませんか、これからの事
     「いのち」を見殺しにしないで!!
     

    「桜ばな いのち一ぱい咲くからに 生命を
     かけて わが眺めたり」
          岡本かの子

「いのち」が二回繰り返されています。岡本かの子の「いのち」への思いが伝わってきます。
さて、貴方は「いのち」を大切にされていますか?見殺しにされていませんか?“「いのち」を見殺しにするような阿呆はこの世にいるはずがないよ”と目くじらを立てて怒られるかもしれませんが、知らずしらずのうちに見殺しにされておられる人が結構多くおられます。
一つの例です。
ご承知のように、「ガン」は不治で、「ガン」と宣告されると、必ず、死を連想されるでしょう。確かに、昭和40年代頃は不治でしたが、現在は必ずしも不治ではありません。昭和40年代には「ガン」の早期発見は至難の業で、多臓器に転移して診断されることが大半でした。それが、いまや、内視鏡やエコーなどの進歩で、大きさ5mmの「ガン」でも診断でき、それに伴い、早期治療が出来るようになりました。
早期ガン(ステージ1)と末期ガン(ステージW)の5年生存率はそれぞれ大腸ガンでは98.9%、19.6%、乳ガンでは100%、34.9%と報告されています。即ち、早期発見・早期治療を受けると、診断されて、5年生きる人は大腸ガンでは100人中99人、乳ガンでは100人中100人ということになります。このように、膵臓ガンを除く他臓器の早期ガンでは、早期に治療すれば5年以内に亡くなる可能性は極めて少ないということです。
それにも拘わらず、早期発見への対応、即ち、検診を受けている人が極めて少ないということです。ちなみに、宇部市の検診受診率は大腸ガン17%前後、乳ガン20%前後と驚くほど低率です。10人のうち、8人が自分の「いのち」をみずから見殺しにしているようなものです。勿論、この8人の方々が全員ガンに罹られるのではないので、少しオーバーな表現ですが、2人のうち、1人がガンに罹ると言われている現在、決して看過出来ないデータです。
宇部市当局も検診の受診率を高めようといろいろな対策を講じていますが、80%の市民は我関せずで、馬の耳に念仏です。
「いのち」が大切と口癖のように言いながら、自分の身を守る手立てを放棄していることは、自分の「いのち」を見殺しにしていると申しても過言ではありません。
定期的に検診を受けていない市民の方々、岡本かの子の詩にあるように今一度命をかけてわが身を眺めて下さいませんか?



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