Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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癒やしのそよ風(ほうふ日報)

体勢順応という罠 NEW
2019年03月30日

体勢順応というわな
   山口大学・県立大学名誉教授
               江里 健輔

私ごとで恥ずかしい話ですが、体勢順応の「罠」にひっかかりそうになったことがしばしばあります。途中で「こりゃまずい」と気づき、はっとさせられたものです。
テストの採点をしている時、どういうわけかわかりませんが、同じあやまりの解答が十ぐらい続くと、最初はこの解答は誤りだと判断しますが、後半になると、「さてよ、誤りと判断した解答が正しくて、正しいと判断した解答が誤りじゃないのか」と、思わず、正解答を確認する始末です。これを「体勢順応」と言われています。
医療の世界でも、同じような例が多々あります。ご承知のように、医療費の支払いには政府が定めた診療報酬(一部自己負担)と定めのない自由診療(全額を個人負担)があります。
例えば、診察の際、医師から、この治療は保険が利きません。しかし、ほとんどの患者さんは自由診療でこの治療を受けておられますと言う説明を聞き、改めて
@「保険が使えません。従って、自由診療で
 行います」 
A 「保険が使えません。自由診療で行いますが、よろしゅうございますか?」
B 「保険が使えません。自由診療で行ってもよいでしょうか?」
と問われたら、貴方は「No」と言えますか?
@とAは一方的で強制的です。Bは相談しているようなスタイルですが、半ば強制的です。
あらかじめ、体勢反応を説明した後に、承諾を得る、」これが「体勢順応」です。
社会の多数派の声が個人に強く影響するということです。多数派の意見に溶け込んだ時、毛布で包まれたような心地よさを覚え、意思と異なる対応をすることです。
「体勢順応」がもたらす恐るべき危険です。世の中には、選択という形式を取りながら、「No」という事が言えず、「体勢順応」に流されてしまう事が多々あります。体勢はともすれば衝動的で、暗示的ですので、軽々しく信じ易い側面を持っています。日常生活の中で、孤立無援の状況下でも、己が信じる事に手を上げきる勇気ある国民でない限り、日本が破滅の道をひたすら走ることになるのは日本の歴史を振り返れば明白です。我々は、今、将にターニングポイントに立っていると言えるかもしれません。



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