Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
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風のとき(宇部日報)

予防医療は医療費削減にならない? NEW
2019年06月26日

宇部日報(2019,6,10)
考えてみませんか?これからの事㉒
   予防医療は医療費削減にならない?
   江里 健輔

平成28年度の国民医療費は42兆1,381億円と際限なく増加しています。超高齢化社会では医療の高騰は当然ですが、問題は日本経済を破綻させる危険をはらんでいることです。当局は医療費削減のため、いろいろな対策を講じています。予防医療もその一つです。
過日、本誌に早期診断・早期治療を受けましょうと書きましたところ、ある人から
「予防医療としての検診は医療費を倹約に繋がるんですか?繋がらないのであれば、検診・健診は無駄じゃないですか?」
という質問を受けました。
医療経済学者に言わせれば、予防医学は医療費を減らすことにならないということです。私は経済学者ではありませんので、理論的根拠はありませんが、同じ病気に罹っても、若い時には患う期間が長くなりますが、高齢になると患う期間が短くなります。従って、予防医療は医療費を減らすことに繋がると理解しています。
今回は著明な医療経済学者康永秀生氏の意見(朝日新聞、2019,6,12より引用)を踏まえて考えてみましょう。
彼の報告によれば、予防医療は医療費がかかるタイミングを先送りしているだけで、医療費削減のためではないと述べています。即ち、予防医療→重症な病気になる人を減らす→短期的医療費が減少する→寿命が長くなる→一生にかかる医療費総額はむしろ増える、という構図です。予防医療は「健康」という価値を得るための「投資」であるという理論ですが、ちょっと待って、と言いたくなります。
元気であった人が脳梗塞に罹られ、半身不随で、医療のケアが必要となったと仮定します。
予防医療のお蔭で、薬の服用も少なく元気であった人が脳梗塞に罹られた場合、高齢者のため、他の臓器機能も低下していますので、2〜3年ぐらいの煩いでなくなります。しかし、60~70歳代で脳梗塞になられますと、心肺機能に異常がありませんので、患う期間が数十年と長くなります。この間のケアにはそれ相当の金額が必要となり、家族に言葉に表せない負担となります。このように考えると、予防医療は確実に医療費を減らすことになると判断します。
康永氏は今の医療には無駄が多い、例えば、認知症の薬は85歳以上の人にはほぼ効果がないという科学的根拠があります。それにも拘わらず、85歳以上の人にも処方されています。多分、惰性で処方されていると訴えています。私の経験からも、あまり効果があるとは思えません。効果がわずかなのに、コストが膨大な薬や検査の見直しをするような対策を講じない限り、医療費は増え続けることでしょう。問題は
国民の不安をくみ取る医療政策を供与しながら、医療費の無駄をなくすことが必要です。



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