Kensuke Esato,M.D.
江里 健輔
 
江里 健輔
山口大学名誉教授
山口県立大学学長・理事長
執筆情報 [詳細ページ]
風のとき(宇部日報)

腹八分の効用 NEW
2019年08月27日

考えてみませんか?これからの事㉔
       腹八分の効用
      山口大学・県立大学名誉教授
               江里 健輔

疾病を発生する要因の50% は生活習慣にあると言われています。即ち、食生活、運動、喫煙、飲酒、過労などの日常生活が不規則であると病気になりやすいということです。「そんな事ぐらい言われなくても解ってるよ!」と言われそうですが、これが守れないのが人間の性(さが)です。
暴飲暴食を諫める諺に「腹八分に医者いらず」があります。お腹いっぱい食べないで、腹八分目程度に抑えて食べたほうが身体や健康にはよいという意味です。我々先輩は経験的にこの諺を知っていましたが、その根拠を知っている人は少なかったです。しかし、これには明確な科学的根拠があります。小動物を対象とした実験で、食事量を一定に制限した群と好きなだけ食べさせた群を比較したところ、両グループの平均寿命に差があることが分かりました。サラグモを対象とした実験では好きなだけ食べさせた群の平均寿命は50日であったのに対し、カロリー制限した群のそれは90日(1.8倍)、ラットでは前者で23カ月、後者で33ヶ月(1.4倍)でありました(Clinician,594,19-24,2011引用)。カロリー制限が細胞内の酸化ストレス(人間は呼吸をすることで大気中に含まれる酸素を取り入れ、摂取した栄養素を燃やす、即ち酸化することでエネルギーを作ります。しかし、過剰に酸化されると細胞を傷つけることになる、これを酸化ストレスといいます)を抑制するので@加齢性疾患による死亡率が低い、Aガン、動脈硬化性疾患、糖尿病などの発生率が低い、B脳の特定部位の萎縮が抑制されるなどの作用で、病気の発症が少なくなり寿命が伸びることになるわけです。最近は、遺伝子レベル(「長寿遺伝子」や「若返り遺伝子」とも呼ばれるサーチュイン遺伝子)の見地からも解明されつつあります。カロリー制限すると、これらの遺伝子が活性化され、細胞の死滅を防ぐ機能が高まるので寿命が伸びるという理屈です(www.excite.co.jp)。
しかしながら、毎食度に摂取したカロリーを計算することは大変です。プロボクサーのガッツ石松さんは「20数本のバナナを買い、いっぺんに全部食べた。おいしかったのは20本までだったな」と語っています。食べる量が増えるにつれて満足感は減ります。従って、まだ欲しいなあーと思った時に食べるのを止めることが腹八分の目安となるでしょう。
「飽食時代」の現代において、「腹八分」は含蓄ある言葉と思われませんか?





[ もどる ] [ HOME ]